2012年11月18日

ピンクのポンポン★36

気ままな独身生活

働く節約主婦へ変身

 高速バスで東京へ出てきて疲れたれど、節約を考えると仕方が無かった。地方の派遣のお給料は安い。結婚後、やっと独身時代の呑気な生活を自覚した。
 今回のツアーでも複数の公演に参加したかったので、節約できる部分は節約したかった。
 昨夜は留守番してくれる夫のために、カレーを作った。深夜バスで帰宅した後、私も軽く食べたいと思ったので、昨夜、思い切って作ったのだった。そして、今朝、午前中は仕事をこなし、職場から高速バスのターミナルへ向かい、東京行きのバスに乗った。贅沢はできないので、今朝もいつもの様に二人分のお弁当を作った。一つはダンナ様のお弁当で、もう一つは私が東京へ向かう高速バスの中で食べるお弁当だった。
 有給を使うつもりでいたけれど、社員さん達が交代で夏休みを取っている最中なので、諦めることにした。三ヶ月更新の派遣なんていつ切られるか?が分からない。独身の頃は、そんなことは気にもしなかった。でも、結婚したら、いつかはマイホームも欲しいし、子供も欲しい。そう考えると、やはり節約せざるを得なかった。

 公務員の父は、何度か私に見合い話を持ってきたけれど、安定した生活を手に入れるために、気が合いそうにない男性と結婚することは、どうしてもイヤだった。そして、結婚!結婚!とウルサイ両親の為にも、自主的に婚活を始めた私は、 高校時代の同級生に誘われて参加した婚活イベントでダンナ様と知り合ったのだった。
 ありふれた海辺のBBQパーティーで、私とダンナ様はクジの結果、野菜切りのグループに入り、そこで運命の出会いを果たした。背が高くて温厚そうなところに、私が一目惚れし、猛アタックした。初めて会った日に連絡先を交換し、二度目に会ったのは、BBQパーティーに参加していた一部の参加者で開いたオフ会だった。そして3回目に初めて二人で会った。
 メールは亀レスで短く、こちらが凹むような内容ばかりだけれど、一緒に居ると話が弾んで、よく笑った。その笑顔が、とてもキュートだと、私は思っている。てっきり、2〜3歳くらい上かな?と思っていた私は、5回目に会った時に7歳も年上と分かり、驚いた。
 10回目のデートでプロポーズされ、2人で貯金に励むことにした。そして、知り合ってから半年が過ぎた頃、両親から、一度会いたいと言われたのでダンナ様を招待したら、お母さんが台所でお茶を用意している間に、お父さんが先に、
 「娘のことを宜しく頼む」と言ってしまった。そして、お母さんが紅茶のセットとケーキ皿をお盆にのせて応接間へ運んできた頃、既にお父さんはティシュを手に号泣中。事情を知らないお母さんは、お盆をテーブルに置くと、父の隣に座り、ダンナ様を真っ直ぐに見つめて、こう言った。
 「あなた、借金か何かある人なんですか?」
 私とダンナ様が顔を見合わせておどおどしていると、父が泣きながら言った。
 「違う…… 嫁に行ってしまうと考えると、昔の思い出が色々と蘇って……」
 まだ泣き続ける父に、母は追加のティッシュを渡した後、
 「ごめんなさいね」とダンナ様に謝ってから、お茶の用意を始めたので、私もダンナ様も一緒に手伝った。お茶菓子はダンナ様にお願いして買ってきて貰ったチーズケーキだった。母の好きなお店で、母の好きなケーキを買ってきて貰ったのだった。
 それから半年後、知り合ってから1年目の記念日に私達は結婚した。

 結婚前に話し合った結果、エンジニアをしているダンナ様のお給料は高い方ではないし、私は3ヶ月更新に加えて、毎年3月末日付けで退職し、翌日の4月初日に入社するという雇用形態での派遣社員である上に、産休復帰した前例が一件も無かった。なので、30代に入ってから子供を作り、暫くはマイホームの頭金となる預金に励もうという結論になった。そして優しいダンナ様は、子供ができるまではオタゴトを続けることを認めてくれた。でも引き換えに、2年後の車の買い替えを要求してきた。その2年後に買った車を10年は乗って貰う約束をして、要求を呑むことにした。
 独身時代は新幹線やタクシーは当たり前の日帰り遠征も、今は節約するしかなかったし、高いホテル代を支払って2日間も参加する何て贅沢は、私にとっては既に遠い贅沢になっていた。昨夜の寝不足を高速バスの中で解消できると思っていたけれど、想像していたよりも高速バスは乗り心地が悪く、バスを降りてからトイレに入ると、浮腫んだ顔が鏡に映って、驚いた。
 会場に到着し、入場するともう一度トイレに入った。鏡を確認すると、浮腫みはマシになっていた。
 席に着いてから、ダンナ様に『着いたよ』メールをすると、『楽しみだね!』というメールが開演間際に返ってきた。帰りの深夜バスの時間の確認は終演後でも問題なかったので、携帯電話の電源を切った。膝の上にはピンクのポンポンを既に用意済みだった。
 やさしいダンナ様に出会えて満足しつつも、やはりオタゴトの楽しみは続けたいと思った。そのためにも、独身時代よりも“愛”と“元気”を、今夜は貰って帰りたい! 今回は、あと2公演参加予定があるので。

mokkon at 22:00│Comments(0) 妄想小説 

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