2012年11月20日

ピンクのポンポン★38  1/4

※今回はじっくり読んで頂きたいために、わざと区切って更新します。ラストはハッピーエンドですが、これはまだ完治前の段階のお話です。同じ病気を発病しても、もっと早く快復する人もいれば、もっともっと快復に時間がかかる人もいれば、私みたく一生付き合う覚悟を決めてからマシになる人間もいてと、バラバラかと。勿論、余計に悪くなってしまう人達もいらっしゃると思うので、“思い込み”は持たずに、フィクションと認識頂いた上でお読み下さい。
モデルは存在しません、念のため

 頑張って出てきた。毎日が不安で、明日が恐怖。そんな日々が三年も続いていた。駅のホームで事件に遭遇して以来、今も電車には乗れない。今日はボランティアの人達に車で送迎して貰い、家族に付き添って貰っての参加だった。

 私は被害者ではないけれど、近くにいた。そして、目撃者ということで、そのまま、警察から長々と事情を聞かれた。
 考え事をしていた私は腕組みをして、俯き考え事をしていたので、前の人がホームに自ら降りたのか? 突き落されたのか?も分からなかった。身体が触れる様にくっついて並んでいた訳ではないし、私の記憶だと、その人の隣に立っていた男性の後ろに並んでいた記憶までしかなかった。
 電車の運転手が警笛を鳴らす余裕もない程、事件は起きた。気付いた時には、私の前に居た男性が居なくなってはいたけれど、被害者を突き落してから逃げたのか? 被害者が線路に飛び降りたから逃げたのか? 見ていなかった私は分からなかった。線路に転落してからの、
 「ワー!」という声は確かに聞いた。だから顔を上げてしまい、最悪の瞬間を見てしまった私は動けなくなってしまっていた。
 当然の様に、私も容疑者扱いを受けたけれど、被害者と接点が無いことが証明され、無実が証明された。
 その後、被害者は精神病院の通院歴もなければ、借金もなく、遺書めいたのも持っていなかった。人間関係のトラブルも見当たらなければ、持病等もなく、ちゃんと睡眠をとり、普通に朝食を食べてから自宅を出ていたので、通り魔のような殺人事件ではないか?と、自宅に訪ねてきた警察官二人から説明を受けた。その後、被害者が線路へ転落した直後に立ち去った男性が犯人である可能性があるので、顔や特徴を思い出して欲しいと言われたけれど、事件当日に話したこと以外は何も思い出せないことを告げ、謝った。すると、若い方の警察官が強い口調で言った。
 「本当に、あれ以上のことは思い出せないんですか? もしも、犯人が貴女の顔を憶えていたら、あなたに危害を加える可能性があるのに、呑気な人ですね」
 「そうなんですよね。だから何か思い出したことかあれば教えて貰おうと思って来たのに、残念です」
 年配の警察官も冷たく言い放った。
 「まぁ、これからは外出する時は気をつけて下さい。犯人が貴女の前に現れるかもしれませなから」
 若い警察官がそう言い終えると、2人は黙って応接間を出て行った。母が玄関で見送っている声が聞こえた。そして、応接間に入ってくるなり言った。
 「本当に、もう何も思い出せないの? 外で殺されたらどうするの!」
 母の言葉に心の糸が切れてしまった私は、そのまま大声で泣き出した。

 新聞での扱いは小さかったのに、会社や近所での事件の扱いは大きかった。最初は休職を認めてくれていた会社も、事件から三ヶ月を迎えようとした頃、退職を促す連絡が自宅に入った。その頃、私は食事が摂れなくて入院していたので、両親は私には何も告げず、退職の手続きをとり、荷物は母が取りに行った。その際、課長と部長に応接室へ通されて、事件についての質問を受けた母は、初めて私の気持ちが分かったと、後日、私に話してくれた。
 事件は事故、自殺、事件のどれかが分からない状態だったのに、
  本当は被害者と面識があったのではないか?
  加害者らしき男性は本当に存在していたのか?
  私自身が他人に恨みをかうことを何もしていないのか? などの質問を浴びせかけられたとのことだった。更には、つい最近も警察が会社へ来て、私のことをあれこれと個別に訊き、まともに業務できない状態になったので、社内から犯罪者を出さない措置をとることになったと冷たく言われたとのことだった。また課長や部長も部下の監視不十分ということで、訓告を受けてしまったことへの不満も母にぶつけていた。

 ご近所でも同じような言葉が両親や弟にぶつけられていた。
  本当は私が被害者を突き落したのではないのか?
  私の代わりに、被害者が突き落されたのではないか?
  前に立っている人の顔も見てないのは嘘ではないか?
  被害者が自殺しようした私を止めようとして、線路に落ちたのではないか?
 よくそれだけ妄言が並んだものだと思う。勿論、それは今も続いていて、ご近所では、私は再起不能の精神病の人間で、薬の副作用が原因で出産もできない身体になってしまっているらしい。

mokkon at 22:00│Comments(0) 妄想小説 

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