2012年12月02日

ピンクのポンポン★48

 【鈍感男の新しい恋の始まり】 
 そろそろ、お役御免だなぁと思いつつ、待ち合わせ場所へ向かうと、友達二人と三人で話をしている妹の姿が目に入った。声を掛け、簡単な自己紹介を済ませてから会場へ向かう。一人は二度目、もう一人は初めて会うコだった。
 妹は、またわざと僕から離れて、友達と僕を喋らせようとしている。
 元々は歳の離れた妹をコンサートへ行かせるのは良いけれど、帰り道が心配!ということで、以前は母が付き添っていたのに、妹の高校卒業と同時に僕の役目へとバトンタッチされてしまった。両親の、遅い時間の電車に一人で乗せて何かあると大変!という気持ちも分からなくはない。普通電車へ乗り換えてからは、車内が淋しい状態になる時があるし、車掌も車内を巡回しない。だから妹が夜遅い時間に帰宅する時、先頭か最後尾の車両に乗るように、僕が言っているくらいなので。でも、だからって、いつまて続ける事になるのだろうと思いつつ、妹の友達と適当に世間話をしながら会場へ入った。
 妹達は学生さんなので、一度、会場へ行き、グッズは購入済みのようで、揃って、襟元にハイビスカスの花をつけていた。中で、待ち合わせた方がお互いに楽だろうと思い、提案するも却下され、結局は今日も待ち合わせをさせられた。

 何となく、妹の本音は分かっている。もしかしたら、親からも何か言われているのかな?とも思う。僕が女性に対して、余り積極的ではないことを気にしてくれているのだろうなぁとは思う。だから、中での待ち合わせに反対するのだろうなぁとも。
 女性と付き合ったことも何度かあるけれど、長続きしないのも事実。相手の趣味に合わせても、こちらの趣味には付き合って貰うと不機嫌になられてしまう。それで、相手の趣味に付き合うことを止めると、破局するのがお決まりのパターンだった。お酒を楽しみながらジャズを聴いたり、クラッシックのコンサートに出かけた後に洒落たレストランで食事をすることも良いとは思う、でも、アイドルのコンサートへ誘うと、露骨に不快な顔をして、途中で帰ると言われたり、コンサートの後の食事の最中にずっと不機嫌な顔をされていたり、アイドルなんてどこが良いの?と言われてしまうと、こちらも誘わないけど、
 「元々、興味のない分野だから、一人で楽しんできてね」としか、言いようがないのだった。
 シスコンではないけれど、それで無駄になってしまういそうだったチケットも、妹は最後まで、そりなりに楽しそうに観ていたし、時には、自分が興味を持った女性アイドルのチケットを何とかして欲しいと言う妹の方が、一緒に居てお気楽なのも事実だった。ただ、妹についてゆくと、後ろの人達の手前、立てない!ので、ステージが見えないこともあるのが、残念だった。

 会場に入ると、今度は妹が友達二人とトイレへ行くと言いだし、ずっと喋っていた妹の友達と二人で、先に席へ向かうことになった。途中の自販機で飲み物を買うついでに、妹達の分も買った。
 今日、妹が誘った友達は一人は初めて会うけれど、客席へ共に向かっているのは、春に舞台を観に行った時も来ていたコだった。確か、他のグループが好きだけど、前々から興味はあったので、妹に誘われて来ることにしたと言っていた。と言うことは、彼女なりに今日の主役を気に入ったから、また来たのだろうと思っていた。
 待ち合わせ場所で会ってから、ずっと僕の仕事の話とか、普段はどんなコンサートへ行っているのか?と、インタビューみたいに聞いてくるけれど、控えめだけど、懸命に僕と話そうとしている姿に、悪い気はしていなかった。彼女にばかり質問を投げて貰うと申し訳ないので、僕も妹の普段の様子や、彼女の将来の夢を訊いてみたりした。
 そろそろ、開演なのに……と思って、心配していたら、妹達が戻ってきた。
 「トイレが混んでて、遅刻かと思った」
  くったくなく笑った後、席に座ると、妹がピンクのポンポンを鞄から出して、僕にも渡してきた。
 「冗談、やめろよ」
 「良いじゃない、手に持っているだけで良いからサ」
 諦めて、取り敢えず受け取ると、妹が肘で僕の左腕を突っついてきた。
 「何?」
 「どうだった?」
 「だから、何が?」
 「まあ、良いや。明日もあるから……」
 「何だよ?」
 「もう始まるよ」
 兄妹で言い合っていると、本当に客電が落ちた。
 まぁ、帰りの電車の中ででも訊けば良いかと思い、僕は渡されたピンクのポンポンを意味もなく、膝の上で振ってみた。

mokkon at 22:00│Comments(0) 妄想小説 

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